キース・ジャレット - 《ケルン・コンサート》
先だって、キース盤をならべた。
だが、これを抜きにしてキースは語れまい。
すべて即興という。
信じがたいほどであるが、ストック・フレーズをためるだけためて一気に吐き出したとしても、これだけのものができるとも思えぬ。
まさに奇跡の名盤だ。
20歳のころ、バイク事故を起こし、ひと月ほど入院した。そのとき、同じ病室にいたSさんに教えてもらった思い出深いディスクである。
病院のベッドの上で、Sさんから借りたカセットを、これまた友人から借りたウォークマンで毎夜毎晩聴いた。
ひと足先に退院が決まったときに、Sさんはそのカセットをプレゼントしてくれた。もちろん、今でももっている。
大きな出会いだった。Sさんとは退院後、音信不通となってしまったが、私はこの《ケルン・コンサート》をいまだに聴いている。
ちなみに、私が初めてCDプレーヤーを買おうと思ったきっかけは、この《ケルン・コンサート》がCD化されていることを知ったことだった。(※初版CDでは、パート2Cが未収録だった。)
夜に聴きたい。
北海道を旅する。森のなかで焚き火をやりながら、これを聴く一夜が、かならずある。
今年は行けなかった。
LPをターンテーブルに載せ、ひさしぶりに聴いた。
目を閉じて耳をかたむける。
あの病室を思い出す。
そして、自分はいつしか大雪の森のなかにいる。
しあわせなんて、すぐそばにあるじゃないか。
そんなことをつぶやく。
■ Keith Jarrett(p) "THE KOLN CONCERT"
( ECM 1064/65 LP-W.GERMANY )
SONY α350
SONY α50mm F1.4(SAL50F14)
以下はウンチク――。
超有名盤――というより、もはや歴史的名盤――なので今さら付記することもない。ただし、これを聴く場合、できることならCDよりもLPがよく、そしてその場合は、絶対にドイツ盤を採るべきであることを言っておきたい。
アメリカ盤はテープ転写が激しく、冒頭部分など、ゴーストが2、3度聞こえてから実音が聞こえだす。日本盤(トリオ・レコード)でもゴーストが1度聞こえる。オリジナルのドイツ盤にそうした瑕疵はない。音にしても、やはりオリジナルの強みでドイツ盤がもっともいいような気がする。
CDがなぜよくないかというと、音質面で不満はないものの、編集に問題があるからである。
「LPにおける第3面の冒頭」が欠落しているうえ、にもかかわらずなにもなかったようにつなげてしまっており、まったく修正されぬまま今に至っているのだ。理解しがたい。


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