CD

2009年11月27日 (金)

ミラ・ゲオルギエヴァのベートーヴェン

Georgievabee16

■ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
  L.V. Beethoven: Violin Concerto in D major, Op. 61
  ミラ・ゲオルギエヴァ(vn) ロッセン・ミラノフ / ザ・ニュー・シンフォニー・オーケストラ・ソフィア
  Mila Georgieva(vn)  Rossen Milanov / The New Symphony Orchestra Sofia
   ( K&K VERLAGSANSTALT 番号なし )


 偶然と気まぐれで手に入れたCDが大当たり。

 彼女のヴァイオリンは、線は細いが、しなやかで、とにかく音が美しい。それだけでなく、聴き手の心に染み入る音楽的な力もじゅうぶんだ。
 豪快かつ雄大なミラノフの指揮も魅力。だが、ゲオルギエヴァの優雅で伸びやかな音楽はそれ以上の豊かさをもってホールを満たしている。

 録音については、残響多めで、それがやや人工的。しかし、この演奏のすばらしさをスポイルするものではない。

 ミラ・ゲオルギエヴァは、1976年生まれ。
 当盤は1999年04月06日、ブルガリアでのライヴであるから、22~23歳時の録音。

 ブルガリアの女流ヴァイオリニストといえば、まずストイカ・ミラノヴァ、そしてボジダラ・クズマノーヴァなどの名が浮かんでくる。いずれも魅力的な演奏家である。
 私的好みでいえば、このゲオルギエヴァのベートーヴェンはS・ミラノヴァ盤(Balkanton BCA 10433)に遜色なく、むしろ上かもしれない。

 

| | コメント (0)

2009年11月17日 (火)

『夏の名残のバラ』 - 服部緑地 2009秋 14

091108hrroses25
 

 『夏の名残のバラ』という曲がある。
 イギリス民謡で、原題は"The Last Rose Of Summer"。日本では『庭の千草』として有名だ。

 ヴァイオリンの名手だったエルンストという人が、これを主題にしたヴァイオリンのための練習曲を書いた。ヴァイオリン一挺、すなわち無伴奏で弾かれる。正確には練習曲第6番という。
 この曲、愛らしささえ感じられて聴くほう(私)にはけっこうなのであるが、弾くほうにとっては高度な技巧を要求されるやっかいな曲であるらしい。

 エルンストの『夏の名残のバラ』は時間にすると10分ほどの曲で、これ一曲でアルバムにはできない。だから、〝ヴァイオリン名曲集〟というようなアルバムにふくまれていることが多い。
 ほかの曲を目当てで買ったところが、この曲も付いてきたということも何度かある。
 古書店で一冊買って帰り、開いてみたら、ホロリとなにかが落ちて、拾ってみると押し花だった、という経験があるが、あれに似ている。
 ちょうど、書物にはさみこまれた、押し花のしおりを連想させるのである。
 
 いろいろな演奏がある。「われにおいて最高!」はクレーメルの2回目の録音。→
 また、ヘイリーが美しい歌唱を聴かせてくれている。→
 
 
 小春日和――。
 バラが咲いていた。
 もはや「夏の名残」とは言えないけれど、過ぎ去りし夏を想いつつ、シャッターボタンを押しました。
 私の『夏の名残のバラ』のイメージは、ホントはピンクのバラなんですけどね……。
 

 SONY α350
 SONY 135mm F2.8[T4.5] STF (SAL135F28)
 place: 服部緑地


 【シャコンヌ狂時代】 日下紗矢子の無伴奏ソナタ第3番 ( & )( 2008 )

 

| | コメント (0)

2009年10月29日 (木)

900000000円

 名ヴァイオリニストのアーロン・ロザンドが愛器のグァルネリウスを手放した――というニュースがあった。
 音楽家生活から引退するのだろうか。82歳というから、そういうことなのかもしれない。あるいはすでに引退していたのかもしれない。
 彼のグァルネリウス・デル・ジェス〝コハンスキ〝は1741年製作、歴史的名器として知られていた。

 その買値が9億円。史上最高額という。
 これについては、その時代のレートというのがあるから、一概には言えないが、昨今の世界的不況を考慮すれば、実質的にもダントツの史上最高ではあるまいか。

 グァルネリウス・デル・ジェスというのは、グァルネリ一族というヴァイオリン製作の名門があり、そのなかでも名人とされたバルトロメオ・ジュゼッペ・アントニオ・グァルネリが造ったヴァイオリンをさす。
 日本人演奏家では、五嶋みどりがデル・ジェスを使っている。

 ジュセッペ・グァルネリは、ストラディヴァリとならんで、史上最高のヴァイオリン製作者とされている。
 伝えられるところでは、実直なストラディヴァリに対し、グァルネリは酒好きの女好きでだらしのないところがあったという。そんなエピソードを聞くと、私などは、グァルネリのほうに親近感を抱いてしまう。

 こういうのは、買い手が値段を決めるものだろうから、これを高いとか安いとか言うのは筋が違っているだろう。
 ともかく、この〝コハンスキ〝が、美術品扱いされて、「すぐれた」(※ここが大事)演奏家の手から遠ざけられないことを願うばかりである。

 私はクラシック音楽に親しみ、なかでもヴァイオリン音楽を好んで聴いているが、実は、いまだに楽器の音がわからない。レコードやCDを聴いて、それがストラディヴァリウスであるかグァルネリウスか、あるいはグァダニーニであるか、聴きわける自信はゼロである。
 わかるのは、それが「いい音」であるか、「そうでない音」であるか、だけだ。
 しかし、クラシックにうるさい人のなかには、「さすがはストラディヴァリウスだ」とか「グァルネリならではの……」とかそんなことを言っている人がいる。わかる人にはわかるらしい。

 話を元に戻すと、私はヴァイオリンを売ったロザンドの演奏が聴けるCDやDVDをもっている。
 その900000000円の音が入ったディスクがいくらかというと、2枚組のCD(写真右下)で2000円、DVDは香港製で10ドル、すなわち1000円足らずだった。

 ウナギ屋の前を通りかかる。高級ウナギ自体はいい値段であるが、匂いはタダだったりする。
 品のないことを想像してしまった……。

 
Rosand


 ※写真にうつっているヴァイオリンが9億円のグァルネリ・デル・ジェス。ロザンドの演奏も楽器に負けていない。とくに、写真下のバッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータはオススメです。なにしろ2000円ですからお買い得。今後は、〝史上最高額ヴァイオリンによるバッハ!〟――などという惹句がそえられるかもしれませんね。
 

 SONY α350
 SONY α50mm F1.4(SAL50F14)

 

| | コメント (4)

2009年10月27日 (火)

トニー・ベネット 《ベネット/バーリン》

Tonnyberlin025
 

 トニー・ベネットがアーヴィング・バーリンの100歳の誕生日を祝し、バーリンの唄だけで一枚のアルバムをつくった魅惑盤。
 だれ知らぬ者もない『ホワイト・クリスマス』も入っている。
 また、4曲目の"Now It Can Be Told" は、映画『あなたに降る夢』の挿入歌に使用されている。

 全盛期のパワーはないものの、さすがはベネット。枯れた味わいがすばらしい。まさにおとなの味である。
 ゲスト・プレイヤーも超豪華で、デクスター・ゴードン、ディジー・ガレスピーが参加。とくにデクスターが渋い。

 これだけのアルバムにも難点がある。
 収録時間がみじかいことだ。たったの30分しか聴けない。
 これはアンマリでっせ……。

 とにかく、これにはウィスキーだろう。
 呑みすぎ注意盤とも言える。

 日本盤のタイトルは《トニー・ベネット・シングス・バーリン》。


  ■Tonny Bennett(vo) "Bennett/Berlin"
    ( COLUMBIA CK44029  CD-CANADA )
 

 SONY α350
 SONY α50mm F1.4(SAL50F14)

 

| | コメント (2)

2009年10月24日 (土)

今宵もキース -  スタンダーズ・ライヴ

Keithlive5
 
 キース・ジャレット・トリオによるスタンダーズ。初期のライヴ2種。
 《スタンダーズ・ライヴ》と《スタンダーズ・イン・ノルウェイ》――。

 前者はパリでのライヴ。冒頭の長く美しいソロ、満を持して鳴りはじめるベースに鳥肌が立つ『星影のステラ』"Stella By Starlight" 、哀愁の旋律から始まり、やがては淡々とガタゴト夜汽車に揺られて行くイメージの『トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ』"Too Young To Go Steady" が◎。
 後者では、なんといっても『リトル・ガール・ブルー』"Little Girl Blue"の愛らしさ。これは、もう、どうしようもないほどいい。

 《スタンダーズ・ライヴ》はジャケもクールだ。イラストはカフカ。


 ■ Keith Jarrett Trio: Standards Live ( in Paris )
    ( ECM J33J 20080  CD-JAPAN )
 ■ Keith Jarrett Trio: Standards In Norway
    ( ECM 521 717-2  CD-GERMANY )
 

 SONY α350
 TOKINA AT-X AF100mm F2.8 MACRO


 【シャコンヌ狂時代】 川原千真 Chima Kawahara ( Ka )

 

| | コメント (0)

2009年10月23日 (金)

キース・ジャレット・トリオ 『ネヴァー・レット・ミー・ゴー』

Keithstvol2cbw
 
 キース・ジャレット・トリオによる傑作シリーズ、《スタンダーズ》の第2集。
 私の◎印は、3曲目(『イン・ラヴ・イン・ヴェイン』)と4曲目(『ネヴァー・レット・ミー・ゴー』)。
 どっちか、となれば4曲目、"Never Let Me Go"――。

 若かりしころ、酔って帰ると、なぜかしら、これを聴きたくなったものだ……って、今もそうですけどネ。

 そのままなら、「行かせないでくれ」だが、原曲の歌詞をみると、「見捨てないで……」というニュアンスのようです。


 ■ Keith Jarrett Trio - "Standards, Vol. 2"
    Keith Jarrett(p)  Gary Peacock(b)  Jack DeJohnette(ds)
    ( ECM J33J-20045  CD-JAPAN )
 

 SONY α350
 TOKINA AT-X AF100mm F2.8 MACRO

 

| | コメント (0)

2009年10月22日 (木)

キース・ジャレット 《メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー》

Keithmanwy5
 

 気取りもなく、自己陶酔的奇声もない。
 いつものような、情熱をほとばしらせる彼ではない。
 おどろくほど内省的である。
 しかし、これもやっぱりキースだ。

 一曲一曲がまことに愛らしい。名工の手による小さな木彫細工のようである。
 もちろん、それぞれがそれぞれのかたち、表情をもっている。

 夜、酒とともに――もいいが、昼下がりにコーヒー飲みながら――でも悪くない。

〝珠玉〟と呼ぶにふさわしいスタンダード集です。
 

  ■Keith Jarrett (p) "The Melody At Night, With You"
    ( ECM UCCE-9206  CD-JAPAN )
 

 SONY α350
 TOKINA AT-X AF100mm F2.8 MACRO

 

| | コメント (4)

2009年10月17日 (土)

北村大沢楽隊 《疾風怒濤 !!!》

Kogakutai01 Kogakutai02
 《疾風怒濤 !!!》
 "STURM UND DRANG" old times brass band 
  北村大沢楽隊
   ( off note ON-57  CD-JAPAN )


 数年前、たまたま、テレビ(CS)のニュース番組で、ローカルな話題としてこの楽団を紹介しているのを観た。
 その5分か10分かの時間、私はテレビの画面に釘付けになり、そのあとも、すごいものに接した感激がしばらく醒めず、呆然となったものである。

 CDが出ているらしい。即オーダーした。

 届いたCDが鳴りだしてほどなく、私はあまりのうれしさに吹き出してしまっていた。
 エンタメの原点、音楽の原石のようなものがそこにはあった。そして〝ニッポンの元気〟のようなものも。
 そうしてそれらが、まるで崖の落石のようにゴロゴロと転がり落ちてきて、その一つ一つがことごとく私の心臓を直撃したのである。

 これを聴いて、音程がどうの、ヘタクソだのなんのと言うのは無粋というものであり、そういうひとには、音楽というものをわかってはれへんな、と強引なことを言ってしまいたい。
 魂だ。それでじゅうぶんではないか。
「耳で聴くな。身体で聴け」とでも言いたくなるような音楽である。

 ここでは、適当なカテゴリーがないので「ジャズ&フュージョン」にふっておいたが、ほんとうはこのアルバム、そんなものは超越してしまっている。強いていえば、〝ジャパニーズ・フォルクローレ〟とでもすべきかもしれない。
 なにしろ、音楽の原石なのだから。

 演奏は北村大沢楽隊。
 メンバーは、宮城県石巻市の北村大沢地区において、普段は農業に従事する男たち。
 楽隊結成は大正時代にさかのぼる。ここまでにメンバーの入れ替わりがあったが、そのスピリッツは冷めることなく受け継がれてきた。
 ディスクでは、彼らに目をつけた《ちんどん通信社》のメンバーも演奏に参加している。
 音楽の合間に、たとえばこんなやりとりが聴かれる。

  ちんどん通信社・林氏 「今のはなんて曲ですか?」
  楽隊メンバー 「わがんね(わからねえ)」


 帯にある「コノオトコタチ、過激ニシテ愛嬌アリ」のコピーが秀逸。
 「過激にして愛嬌」はそのとおりと思うが、私はそれ以上に、彼らの音楽が運んでくる、どことなくのどかな、なつかしい空気に惹かれる。
 ジャケの写真がまた表裏ともにカッコいい。内容とも、メジャーレーベルが忘れてしまったこだわりを感じさせている。

 このディスク、聞くところによると、音楽雑誌で、〝0点〟をつけられたそうな。
 けっこうじゃないか!

 廃盤にしたくないCDだ。

| | コメント (2)

2009年10月 7日 (水)

今井美樹  "retour"

Imairetour16
"retour" ( 1990 )
 歌 / 今井美樹
     ( FOR LIVE FLCF-31078  CD )


「今井美樹のような」――。
 そうたとえるしかないようなすてきな歌声がいい。そこに生まれる空気感がいい。そのやさしい雰囲気につつまれる感覚がいい。

 たとえば、岩崎宏美が、そのカヴァー・アルバムで今井美樹の『PRIDE』をうたっている。
 岩崎宏美は超一流であるが、やっぱりこの唄は今井美樹でなければ、響いてこない。
 今井美樹のうたう唄は今井美樹のためにできている。『PEACE OF MY WISH』など、ほかの歌手がうたえば、説教がましく聞こえてしまい、私ならディスクを放り投げかねない。

 ただ、"Lluvia"に続くアルバム"flow into space"で、私自身はほのかな違和感をおぼえた。そして、"A PLACE IN THE SUN" で、自分が求めているものから離れてしまったな、という決定的なものを感じ、それを最後に、彼女のアルバムは買っていない。
 したがって、私の愛聴するのは、主に、90年代前半までの彼女となり、もっているのは11枚。ライヴ盤が欠けている。会場の熱気など必要ないのでは……と考えて見送り、そのままになった。
 いずれにも魅惑曲がふくまれていて、1枚もはずすことはできない。アルバム〝retour〝 は代表として挙げたにすぎません。
 
 デビュー・アルバムの "femme" から5枚目の"mocha" まではアナログが存在。
 "mocha"は、時代がCDにほぼ移行しとげたらしき時期に出たため、プレス枚数もすくないようだ。私もアナログでもっているのは最初の4枚まで。
 特別愛惜ナンバーを思いつくまま列挙すると、『夏をかさねて』 『黄色いTV』 『retour』 『野性の風』 『Lluvia』 『笑顔』 『とっておきの朝を』 『flow into space』 『半袖』 『瞳がほほえむから』 『PEACE OF MY WISH』 『9月半島』……まだまだある。

 サラリーマン時代――。
 ゴールデンウイークがひと月後にせまり、私は会社に対し、GW10連休を要求した。出勤は暦どおり、と聞かされたからである。
 大型連休を利用して北海道に行くつもりだった。その会社に就職したおかげで、毎年続いていた北海道行が、前年にとぎれていた。
 先輩社員からは、みんなをはたらかせておいて自分は休みか、と至極当然な顔をされたが、意に介さなかった。
 結局、休みまで毎週土曜出勤など、あれこれ交換条件を提示され、それらをすべて受け入れることで手を打った。
「すんませんなァ」
 私は笑いをこらえながらそう言い、その場でフェリー会社に電話を入れ、チケットを押さえた。

 GWの北海道はメチャメチャ寒く、内陸部は残雪がどっさりであり、雪上にテントを張らされたりもした。キャンプ場はどこもかしこもガランとしていて、心細いことこのうえもない。
 今なら願ったり叶ったりのシチュエーションであるが、当時はまだ年季が足りなかった。
 酒と音楽が心強い相棒だった。その音楽も、クラシックやジャズには手が伸びない。私が聴いていたのは、人の歌声ばかりであり、その中心となっていたのが山下達郎、そして今井美樹だった。
 焚き火の前でホットウィスキーをやりつつ、同じカセットを毎夜、繰り返し聴いていた。時代はすでにCDになっていたが、電池の消耗度の低さでカセットのほうがまだ圧倒的に優位だったのである。

 カセットは、やがてCDになり、今やオーディオ・プレーヤーになった。しかし、キャンプで聴く音楽はほとんど変わっていない。
 今でも北海道に行くと、今井美樹の『retour』なんかを聴きながら、あの正味一週間のうち5日間が雨だったゴールデンウイークを思い出したりする。

 キャンプの夜に、バッハやベートーヴェンがなくてもかまわない。だが、今井美樹がなければ困る。もし、聴けないとなると、ヘタすりゃ、キャンプ自体を中止することになる。
 


 【シャコンヌ狂時代】
 アリーナ・イブラギモヴァ Alina Ibragimova ( I )  クリストフ・ポッペン Christoph Poppen ( P )

 

| | コメント (4)

2009年10月 5日 (月)

autumn harvest 2009 - great performances

Autumnh62 

 仲秋の候――。
 
 先週末、予約していたディスクが届いた。
 新譜をこれだけまとめて買うのは初めて。じっとしておれぬようなディスクが、ほとんど同時に登場、優先順位をつけることができなかった。
 まさに、収穫の秋というほかはない。すべて◎。

  ①ミケランジェリ&バレンボイムのシューマン(ピアノ協奏曲)
  ②イダ・ヘンデル&ラトルのシベリウス(ヴァイオリン協奏曲)
  ③ポリーニのバッハ(平均律クラヴィーア曲集第1巻)
  ④イブラギモヴァのバッハ(無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲)

 ミケランジェリの弾く、シューマンのピアノ協奏曲。好きな演奏家と曲の組み合わせであるためにじっとしておれなかった。
 ミケランジェリが生前、リリースをしぶったせいで、お蔵入りになっていたという。つまり〝死人に口なし盤〟である。ライヴ録音。
 演奏家本人と聴き手の見解はしばしば一致しない。私にとっては、これなどもその一例となる。
 ミケランジェリの演奏は色彩感に富み、きわめて明快。むずかしい字、むずかしい表現を使わず、しかも説得力がある……そんな名文のおもむきがある。
 バレンボイム&パリ管は、まるでベートーヴェンかブラームスかのようなスケールの大きさで、これは好みのわかれるところかもしれない。
 もしかすると、この大仰さがミケランジェリの気に障ったのか……。
 両者のコンビネーションにやや難ありの感もないではないが、できあがったものが圧倒的であり、結果として大きな感動を呼び起こした。
 録音も申しぶんない。
 カップリングのドビュッシーも名演。

 イダ・ヘンデルが昔、ベルグルンドと組んで残した旧盤を愛聴しているだけに、じっとしておれなかった。
 1993年のライヴ。
 名演だった旧録音に劣らぬデキだ。ラトル&バーミンガム市響もいい。
 カップリングはエルガー。ヘンデルはこの曲も過去にボールトと録音していた。こちらは旧録のほうがやや上か。

 ポリーニは超人気のピアニストであるが、私的にはさほど興味をもっていない。つもりが、ベートーヴェンを中心に、ディスクはけっこうもっている。実は好きなのかもしれない。
 ともかく、彼が平均律を入れたと聞くと、じっとしておれなかった。
 リヒテルの名盤を彷彿させる音楽性満点のバッハ。実際、よく似ている。そうとう弾きこんでいるように感じる。気合いもかなりのもの。グールドばりのうなり声も聞こえてくる。
 今回は第1巻のみであるが、おそらく第2巻も早晩出てくる、と想いたい。

 アリーナ・イブラギモヴァが、自身のウェブサイトでずっと前から「2009年の09月に出しますよ」と予告していたもの。その約束がどうやら守られると知り、じっとしておれなかった。
 今年はすでに、アッカルド、ムローヴァによる無伴奏の注目盤が出ているが、私的期待度では、このイブラギモヴァはムローヴァよりも大きかったものである。
 そして期待どおりのものができあがってきた。
 アッカルド盤を「デジタル最高の無伴奏」と少々興奮気味に決めつけたが、魅力という点ではこのイブラギモヴァのバッハも劣っていない。バッハの無伴奏をこれほどチャーミングに、しかもていねいに弾いた例は、これまでほとんどなかったのではないか。
 録音もすばらしい。実音と残響が混濁せず、絶妙にブレンドされている。 
 これはまさしく、大きな〝収穫〟だった。


  J.S.Bach: The Well-Tempered Clavier Book 1, BWV846-869
     Maurizio Pollini (p)
     ( DG )

 Schumann: Piano Concerto in a minor, Op. 54
     Arturo Benedetti Michelangeli (p)  Barenboim / Orchestre de Paris
      ( DG )

  Sibelius: Violin Concerto in d minor, Op. 47
     Ida Haendel (vn)  Rattle / City of Birmingham Symphony Orchestra
      ( TESTAMENT )

  J.S.Bach: Sonatas and Partitas for solo violin, BWV.1001-1006
     Alina Ibragimova (vn)
      ( hyperion )

 

| | コメント (4)