器楽

2009年12月 4日 (金)

ジェームズ・エーネスのパガニーニ

Ehnespaganini20
 
■パガニーニ 24のカプリース(奇想曲)作品1
  Paganini: 24 Caprices, Op. 1
  ジェームズ・エーネス (vn)
  James Ehnes (vn)
   ( onyx ONYX 4044  CD-EU )


 エーネスの弾くパガニーニのカプリース全曲。
 彼にとって2度目の録音である。
 旧録もじゅうぶん満足できるディスクだったが、新録はその上をいく。
 期待&予想どおりのデキだ。

 手許にはほかに、ミンツ盤、五嶋みどり盤、レビン盤、ピカイゼン盤などがあるが、今回のエーネス盤は、それらすべてをしのいでいると感じる。ただし、世評高いアッカルドの新盤やパールマン盤、リッチ盤、いずれも未聴なので、これを最高と決めつけるには説得力に欠けるだろうから、それは控えなければならない。
 ともかく、このエーネス盤がこの曲集ディスクのトップクラスにあるのは確実だ。

 録音もよい。残響が豊潤でありながら楽音と混濁していないので、エーネスのすばらしいテクニック、美しい音色を堪能できる。

 彼からは今後も目が離せない。

 

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2009年11月17日 (火)

『夏の名残のバラ』 - 服部緑地 2009秋 14

091108hrroses25
 

 『夏の名残のバラ』という曲がある。
 イギリス民謡で、原題は"The Last Rose Of Summer"。日本では『庭の千草』として有名だ。

 ヴァイオリンの名手だったエルンストという人が、これを主題にしたヴァイオリンのための練習曲を書いた。ヴァイオリン一挺、すなわち無伴奏で弾かれる。正確には練習曲第6番という。
 この曲、愛らしささえ感じられて聴くほう(私)にはけっこうなのであるが、弾くほうにとっては高度な技巧を要求されるやっかいな曲であるらしい。

 エルンストの『夏の名残のバラ』は時間にすると10分ほどの曲で、これ一曲でアルバムにはできない。だから、〝ヴァイオリン名曲集〟というようなアルバムにふくまれていることが多い。
 ほかの曲を目当てで買ったところが、この曲も付いてきたということも何度かある。
 古書店で一冊買って帰り、開いてみたら、ホロリとなにかが落ちて、拾ってみると押し花だった、という経験があるが、あれに似ている。
 ちょうど、書物にはさみこまれた、押し花のしおりを連想させるのである。
 
 いろいろな演奏がある。「われにおいて最高!」はクレーメルの2回目の録音。→
 また、ヘイリーが美しい歌唱を聴かせてくれている。→
 
 
 小春日和――。
 バラが咲いていた。
 もはや「夏の名残」とは言えないけれど、過ぎ去りし夏を想いつつ、シャッターボタンを押しました。
 私の『夏の名残のバラ』のイメージは、ホントはピンクのバラなんですけどね……。
 

 SONY α350
 SONY 135mm F2.8[T4.5] STF (SAL135F28)
 place: 服部緑地


 【シャコンヌ狂時代】 日下紗矢子の無伴奏ソナタ第3番 ( & )( 2008 )

 

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2009年10月29日 (木)

900000000円

 名ヴァイオリニストのアーロン・ロザンドが愛器のグァルネリウスを手放した――というニュースがあった。
 音楽家生活から引退するのだろうか。82歳というから、そういうことなのかもしれない。あるいはすでに引退していたのかもしれない。
 彼のグァルネリウス・デル・ジェス〝コハンスキ〝は1741年製作、歴史的名器として知られていた。

 その買値が9億円。史上最高額という。
 これについては、その時代のレートというのがあるから、一概には言えないが、昨今の世界的不況を考慮すれば、実質的にもダントツの史上最高ではあるまいか。

 グァルネリウス・デル・ジェスというのは、グァルネリ一族というヴァイオリン製作の名門があり、そのなかでも名人とされたバルトロメオ・ジュゼッペ・アントニオ・グァルネリが造ったヴァイオリンをさす。
 日本人演奏家では、五嶋みどりがデル・ジェスを使っている。

 ジュセッペ・グァルネリは、ストラディヴァリとならんで、史上最高のヴァイオリン製作者とされている。
 伝えられるところでは、実直なストラディヴァリに対し、グァルネリは酒好きの女好きでだらしのないところがあったという。そんなエピソードを聞くと、私などは、グァルネリのほうに親近感を抱いてしまう。

 こういうのは、買い手が値段を決めるものだろうから、これを高いとか安いとか言うのは筋が違っているだろう。
 ともかく、この〝コハンスキ〝が、美術品扱いされて、「すぐれた」(※ここが大事)演奏家の手から遠ざけられないことを願うばかりである。

 私はクラシック音楽に親しみ、なかでもヴァイオリン音楽を好んで聴いているが、実は、いまだに楽器の音がわからない。レコードやCDを聴いて、それがストラディヴァリウスであるかグァルネリウスか、あるいはグァダニーニであるか、聴きわける自信はゼロである。
 わかるのは、それが「いい音」であるか、「そうでない音」であるか、だけだ。
 しかし、クラシックにうるさい人のなかには、「さすがはストラディヴァリウスだ」とか「グァルネリならではの……」とかそんなことを言っている人がいる。わかる人にはわかるらしい。

 話を元に戻すと、私はヴァイオリンを売ったロザンドの演奏が聴けるCDやDVDをもっている。
 その900000000円の音が入ったディスクがいくらかというと、2枚組のCD(写真右下)で2000円、DVDは香港製で10ドル、すなわち1000円足らずだった。

 ウナギ屋の前を通りかかる。高級ウナギ自体はいい値段であるが、匂いはタダだったりする。
 品のないことを想像してしまった……。

 
Rosand


 ※写真にうつっているヴァイオリンが9億円のグァルネリ・デル・ジェス。ロザンドの演奏も楽器に負けていない。とくに、写真下のバッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータはオススメです。なにしろ2000円ですからお買い得。今後は、〝史上最高額ヴァイオリンによるバッハ!〟――などという惹句がそえられるかもしれませんね。
 

 SONY α350
 SONY α50mm F1.4(SAL50F14)

 

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2009年10月 5日 (月)

autumn harvest 2009 - great performances

Autumnh62 

 仲秋の候――。
 
 先週末、予約していたディスクが届いた。
 新譜をこれだけまとめて買うのは初めて。じっとしておれぬようなディスクが、ほとんど同時に登場、優先順位をつけることができなかった。
 まさに、収穫の秋というほかはない。すべて◎。

  ①ミケランジェリ&バレンボイムのシューマン(ピアノ協奏曲)
  ②イダ・ヘンデル&ラトルのシベリウス(ヴァイオリン協奏曲)
  ③ポリーニのバッハ(平均律クラヴィーア曲集第1巻)
  ④イブラギモヴァのバッハ(無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲)

 ミケランジェリの弾く、シューマンのピアノ協奏曲。好きな演奏家と曲の組み合わせであるためにじっとしておれなかった。
 ミケランジェリが生前、リリースをしぶったせいで、お蔵入りになっていたという。つまり〝死人に口なし盤〟である。ライヴ録音。
 演奏家本人と聴き手の見解はしばしば一致しない。私にとっては、これなどもその一例となる。
 ミケランジェリの演奏は色彩感に富み、きわめて明快。むずかしい字、むずかしい表現を使わず、しかも説得力がある……そんな名文のおもむきがある。
 バレンボイム&パリ管は、まるでベートーヴェンかブラームスかのようなスケールの大きさで、これは好みのわかれるところかもしれない。
 もしかすると、この大仰さがミケランジェリの気に障ったのか……。
 両者のコンビネーションにやや難ありの感もないではないが、できあがったものが圧倒的であり、結果として大きな感動を呼び起こした。
 録音も申しぶんない。
 カップリングのドビュッシーも名演。

 イダ・ヘンデルが昔、ベルグルンドと組んで残した旧盤を愛聴しているだけに、じっとしておれなかった。
 1993年のライヴ。
 名演だった旧録音に劣らぬデキだ。ラトル&バーミンガム市響もいい。
 カップリングはエルガー。ヘンデルはこの曲も過去にボールトと録音していた。こちらは旧録のほうがやや上か。

 ポリーニは超人気のピアニストであるが、私的にはさほど興味をもっていない。つもりが、ベートーヴェンを中心に、ディスクはけっこうもっている。実は好きなのかもしれない。
 ともかく、彼が平均律を入れたと聞くと、じっとしておれなかった。
 リヒテルの名盤を彷彿させる音楽性満点のバッハ。実際、よく似ている。そうとう弾きこんでいるように感じる。気合いもかなりのもの。グールドばりのうなり声も聞こえてくる。
 今回は第1巻のみであるが、おそらく第2巻も早晩出てくる、と想いたい。

 アリーナ・イブラギモヴァが、自身のウェブサイトでずっと前から「2009年の09月に出しますよ」と予告していたもの。その約束がどうやら守られると知り、じっとしておれなかった。
 今年はすでに、アッカルド、ムローヴァによる無伴奏の注目盤が出ているが、私的期待度では、このイブラギモヴァはムローヴァよりも大きかったものである。
 そして期待どおりのものができあがってきた。
 アッカルド盤を「デジタル最高の無伴奏」と少々興奮気味に決めつけたが、魅力という点ではこのイブラギモヴァのバッハも劣っていない。バッハの無伴奏をこれほどチャーミングに、しかもていねいに弾いた例は、これまでほとんどなかったのではないか。
 録音もすばらしい。実音と残響が混濁せず、絶妙にブレンドされている。 
 これはまさしく、大きな〝収穫〟だった。


  J.S.Bach: The Well-Tempered Clavier Book 1, BWV846-869
     Maurizio Pollini (p)
     ( DG )

 Schumann: Piano Concerto in a minor, Op. 54
     Arturo Benedetti Michelangeli (p)  Barenboim / Orchestre de Paris
      ( DG )

  Sibelius: Violin Concerto in d minor, Op. 47
     Ida Haendel (vn)  Rattle / City of Birmingham Symphony Orchestra
      ( TESTAMENT )

  J.S.Bach: Sonatas and Partitas for solo violin, BWV.1001-1006
     Alina Ibragimova (vn)
      ( hyperion )

 

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2009年7月12日 (日)

ウェンディ・チェンのショパン

Wendyc3

 アメリカのピアニスト、ウェンディ・チェンのショパン・アルバム。
 愛聴盤である。
 好きな『舟歌』入り、という、それだけの理由で買ってみたら大当たりだった。
 バラード4曲、アンスピ&大ポロなどもすばらしい。
 録音優秀。

 チェンはロサンゼルス出身。15歳時にプレヴィン&ロス・フィルをバックにデビューを果たした。
 過去に来日もし、大阪でも演奏したらしいが、私は当時そのことに気づかず、聴きのがしている。


 ◆CHOPIN - BOLERO   Wendy Chen (p)

   ボレロ作品19
   ヘクサメロン変奏曲ホ長調
   バラード第4番作品52
   バラード第3番作品47
   バラード第2番作品38
   バラード第1番作品23
   舟歌作品60
   アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ作品22

   ( RCM 19702  CD-USA )

 
    

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2009年2月15日 (日)

バッハのシュープラー・コラール

Walcha58

 普段はあまり聴かないが、突然聴きたくなるのがオルガンである。

 バッハの6つのコラール(シュープラー・コラール)BWV645-50――。
 まったく愛すべき曲集だ。
 私的には華やかなコルゼンパの演奏を好んでいるが、今夜は渋いヴァルヒャを選んだ。20歳くらいのときに買ったLPである。

(※ご存じない方のために記しておくと、このヘルムート・ヴァルヒャ( 1907-1991 )は、盲目のオルガニスト。この分野ではものすごく有名な人で、バッハのオルガン全集録音を二度も達成している。すなわち、膨大なバッハ作品を丸暗記していらっしゃるのだ。すごいでしょう。私がここで聴いているのは2回目の録音です)

 ちいさいころ、TVの天気予報のBGMでBWV645の旋律が使われていたため、聴くたびに関西地方の天気図が頭中にチラリと浮かぶことになっている。また、その番号が「大化の改新」の年号と同じなので、それを憶えさせられたころを思い出したりもする。

 バッハのオルガンといえば、「世界でもっとも有名な曲」とされる〝トッカータとフーガニ短調〟となるのかもしれないが、私は好きじゃない。どころか、私は、あれはバッハの作ではない、と本気で信じているのである。あの曲には、どうしてもバッハのにおいが感じられない……。


 J.S.Bach: Schüblerschen Choräle für Orgel, BWV645-650
  Helmut Walcha ( org )
 ( ARCHIV-Japan  MA-5092  LP )
 

 SONY α350
 SONY α50mm F1.4(SAL50F14)

 

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