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2008年12月 7日 (日)

お宝テープをCD化 - ボベスコのブラームス/ヴァイオリン協奏曲

 以下、いささかマニアック、また結果的に、独善的、自慢めいた話になる。さらに冗長である。つい気が入ってしまった。何卒ご容赦ください。


 先日、がらくたをまとめた段ボール箱のなかから、古いカセットが出てきた。
 HITACHIの"LOW NOISE C-90"(すなわち90分テープ)。ケースはない。ハダカのままだ。
 これには記憶があり、たしか、昔のアニメの主題歌が入っていたはず……と、なつかしがって、カセットデッキにセットして再生してみたところ、果たしてそうであった。
 ところが、ずさんきわまる管理だったせいで、テープが傷んでおり、音はボロボロ。鑑賞に堪えるものではなくなっていた。
 そこでにわかに、ほかのテープが気になりだした。とくに音楽番組を録音した(※いわゆるエア・チェック)もののなかには、1回コッキリの放送でソフト化もされず、聴く手段がそのテープのみ、というのがある。

 真っ先に頭に浮かんだのが、ローラ・ボベスコの大阪公演をエアチェックしたカセットテープだった。ブラームスの協奏曲が入っていた。
 ひじょうに貴重な記録だ。というのは、彼女はこの曲にもっとも自信をもっていたにもかかわらず、ついに正規録音を残さなかったからである(※プライヴェート盤が出ていたが、全3楽章完演ではなかった)。
 もしかすると、あれも悲惨なことになっているのではないか……。

 私はあわてた。なにしろ、だいぶ長いこと再生していない。しかも、C-120(120分)に入れてあった。
 C-120というのは、長いテープを巻いてもかさばらないようにするため、テープ厚を薄くしてある。したがって、テープの強度が落ちており、結果、切断・変形などのトラブルを起こしやすいという弱点をもつ。
 片面に1時間番組を途切れ目なく録れる長所があるかわり、そういった短所をも併せもっているわけだ。
 このボベスコのブラームスも、当時、朝日放送でやっていた『百万人の音楽』という、およそ1時間の番組をまるごと録ったものだった。

 試聴してみた。20数年ぶりの音である。
 放送では、演奏の前に司会の芥川也寸志&野際陽子と、ゲストの山口勗氏によるトークが入る。
 それを聴いていると、途中でとんでもないワウが発生したりする。それでも人の会話であるから、内容が聴きとれれば、まずはよい。
 だが、それが音楽となるとそうはゆかぬ。

 いったん停めて、テープを調べたら、案の定だ。いわゆるワカメ状になっている。
 すでにして再生にたえられるかが危惧される状態といえた。場合によっては、2回目のプレイバックは無理かもしれない。
 そこで、のっけからパソコンにつなぎ、デジタル化しつつ聴くことにした。
 かかってくれれば、まだマシだ。途中でテープがちょん切れたりすれば万事休す。そんな思いで再生ボタンを押した。
 祈るような思いで聴きつづけていると、だんだんワウの発生率が下がってきたようだった。音の乱れがたまにしか起こらなくなってきた。
 と突然、テープが停止した。ふたたびカセットをチェック。テープがからまったり、切れたりはしていない。どうやら、一部テープどうしがくっついていたようだ。そこで、できるだけ刺激を与えたくないところを一か八かで、最初まで巻き戻し、さらに早送りと巻き戻しをして、テープ全体をほぐすことにした。
 これが奏功したようで、今度は途中で停止することなく、最後まで再生できた。

 さいわいなことに、肝心の演奏中、音の崩れは数度きりにとどまり、胸をなでおろす。
 AMから録った。音は悪い。当時はステレオ放送はおこなわれていない。
 それでも、ボベスコのヴァイオリンは、ダイナミックレンジのせまいモノラル音声をものともせずに届いてきた。その音色は彼女ならではのもの。気品にあふれ、みずみずしく、優雅であたたかい。そして、しなやかだ。ときとして慟哭するような哀しい叫びがある。
 演奏者と曲名のアナウンスがあり、そこで録音は終わっていた。

 このテープ、あと何年も放置していたら、と思うとゾッとする。
 音はすぐさまCDRに焼きつけた。こちらも寿命については未知数とされるが、カセットのままよりかはずっと安心感がある。
 とりあえずは、ひと安心か。

 この日の演奏をフィリップスがレコードにするつもりだったが流れた、と聞いた。テープは残っているに違いない。フィリップスにやる気がないのなら、Altus、OTAKEN、OPUS蔵、グリーンドア……どこでもいい、発掘に乗り出してくれぬものか。

 ボベスコは2003年9月に亡くなった。
 私が彼女の死を知ったのは、その日よりすくなくとも数ヶ月経過してからのことだった。日本のマスコミは彼女の死にまったく無関心だったのである。
 当時、追悼盤が出た記憶もない。どころか、彼女の死後、新盤(新発見盤)といえば、プライヴェート盤で出ていた〝サロンコンサート〟の復刻、バーバー、ヴュータンの第5協奏曲がそれぞれほかの演奏のフィルアップとしてリリースされたにすぎない。
 ただ死の前年、TDKが売り出したリサイタル盤は快挙と言っていい。
 ヴュータンの第5協奏曲といえば、来日時にNHK交響楽団との協演があった。電波に乗ったので、録音なり映像なりが残っているはずである。
 来年にも、そのCDなりDVDなりを手にできることを願っている。

 最後に――。
 貴重な録音をカセットテープで架蔵しておられる方は多いだろう。ただ保管してあるだけ、という私のようなズボラな人は、今一度チェックされることをおすすめしておきたい。
 
  
Bobescocdr58
 ↑CDRの完成。手塚幸紀&大阪フィルとの協演。ディスクナンバーは"FeFeFe's Bar lb-02"とした。"lb-01"は同日に演奏されたベートーヴェンで(※これも放送された)、そちらはだいぶ前にCDR化済。
 ちなみに、カセットテープは日立マクセルの"UD C120"。音楽用ではないようだ。
 まあしかし、写真だけなら、カルロス・クライバーの『第9』だって可能なワケで……(苦笑)。


  Brahms: Violin Concerto in D Major, Op.77
  Lola Bobesco(vn)  Yukinori Tezuka / Osaka Philharmonic Orchestra
  ( FeFeFe's Bar lb-02  CDR )
  ※まことに申しわけありませんが、この音源の譲渡・貸出等はできませんので念のため。
  

 SONY α350
 SIGMA 18-50mm F2.8 EX DC

 

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コメント

瀕死の恋人を救わんとする科学者が、自らの実験室にてあれやこれやの最新技術ででもって蘇生を試みるの図、を想像してニヤついてしまいました。
ボベスコのブラコン、ご帰還おめでとうございます。(拍手

しばらくはこのCD-Rでラフロイグですか?

投稿: 庵主 | 2008年12月 7日 (日) 14:51

>庵主さん

最新技術じゃなく、最低技術ですワ。
アレコレやったことで、とりあえず満足してしまい、結局、音のいい彼女のベーコン聴きながら、ホットコーヒーでした(笑)


投稿: fefefe | 2008年12月 7日 (日) 22:45

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